GMPクリーンルーム改修で外せないバリデーションと保守の要点

医薬品製造区域のクリーンルームで空調設備を点検する技術者
医薬品エンジニアリング

GMP区域の改修工事が止まるのは、施工そのものより「基準を満たしていると示せない」場面のほうが多い。壁も床もHEPAフィルターも図面どおりに収まっているのに、記録が揃わず引き渡しが延びる、という形だ。GMP準拠のクリーンルーム改修を、変更管理から保守まで、工程の順に書いていく。

改修は施工の前に、変更管理から始まる

クリーンルームの改修は、すでに適格性が確認された設備の状態を変える行為だ。だからGMPでは、工事の中身を決める前に変更管理(チェンジコントロール)を通すのが筋になる。何を変えるのか、製品品質や既存のバリデーション状態にどう影響するのかを、品質部門が確認できる形で文書にする。ここを飛ばして先に見積もりだけ走らせると、あとから範囲が膨らむ。

施工側が押さえたいのは、稼働中の区域との切り分けだ。改修範囲と稼働区域のあいだには仮設の隔壁を立て、粉じんの流入と差圧の乱れを防ぐ。資材の搬入経路、作業員の入室手順、工具の持ち込み管理も、工事前に手順書として固めておく。正直に言うと、工期を削る工夫よりも、停止期間中に何を再確認するかを先に決めておくほうが、結果として早く終わる。

工事に入る作業員への教育も、見落としやすい。更衣の手順、持ち込み禁止品、清掃の方法など、GMP区域で守るべきルールを事前に伝え、教育を受けた記録を残す。誰がいつ何を教わったかを示せないと、あとの監査で説明に詰まる。職人の腕とは別の話で、これは仕組みの問題だ。

清浄度グレードと差圧、改修で崩れやすいのはどこか

無菌医薬品の製造区域は、GMPの考え方でグレードAからDに分けられ、ISO 14644-1の清浄度クラスと対応づけて管理する。粒径0.5μmの粒子で見た場合の対応は次のとおり。

グレード非作業時作業時
AISO 5ISO 5
BISO 5ISO 7
CISO 7ISO 8
DISO 8規定なし

差圧については、PIC/S GMPのAnnex 1(無菌医薬品の製造)の改訂版で、グレードの異なる隣接した部屋のあいだに最低10Pa(ガイダンス値)が示されている。改訂前は10〜15Paだった。ただしこれは無菌医薬品の話で、経口固形剤などは求められる清浄度の考え方が違う。まずは自社の製品と工程から、ゾーニングを確認したい。

改修で差圧が崩れる原因は、意外に地味だ。壁を貫通する配管・ダクト・ケーブルの隙間処理、扉まわりのシール、給気と還気のバランス。フィルターや空調機に目が行きがちだが、差圧が合わないときの原因が貫通部の隙間だった、という話は珍しくない。改修後は風量と差圧を調整し、その結果を記録に残す。調整は機器と内装仕上げが整った状態で行うのが原則で、仕上げが未完成のまま合わせても、あとでずれる。

HEPAフィルターは、交換よりも取り付け後の確認が本番

HEPAフィルターは、JIS Z 8122で粒径0.3μmの粒子を99.97%以上捕集するものと定義されている。性能そのものは新品なら問題にならない。問題は取り付けだ。枠まわりのシールが甘いと、フィルター本体が無傷でも、そこから未ろ過の空気が室内に入る。

そのため、交換や新設のあとには、据付状態でのリーク試験を行う。上流側にPAOなどのエアロゾルを発生させ、下流側のろ材面と枠まわりを光度計や粒子計数器でスキャンして、漏れを探す方法が一般的だ。判定基準は施設ごとに定めるので、施工前に品質部門と合意しておく。基準が決まっていないまま試験だけ走らせても、合否を判断できない。

私たちの見方では、フィルター交換は単なる部品交換ではなく、バリデーションに関わる変更として扱うべきだ。よくある手戻りは、交換後の室内清掃の時間を見込んでおらず、粒子数が落ち着くまで再測定を繰り返す、というもの。リーク試験、風量・差圧の再確認、清掃と再測定までを、ひとまとまりの作業として計画しておくと慌てずに済む。

改修の範囲や段取りについて、変更管理に入る前の段階から相談したい方向けに、お問い合わせを受け付けています。

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バリデーションとキャリブレーションは、工事の段取りに組み込む

バリデーションは、設備や工程が意図した結果を安定して出せることを、文書で示す活動だ。設備の適格性評価は、設計時(DQ)、据付時(IQ)、運転時(OQ)、性能(PQ)の順に進めるのが一般的。施工者が直接関わるのは主にIQまでだが、OQ以降の試験が滞りなく進むかどうかは、施工の記録の質で決まる。

施工側が用意しておきたい記録は、機器の据付記録、配管の耐圧・気密試験の結果、材料の証明書類、そして計器の校正記録。差圧計、温湿度計、風量計といった重要計器は、校正期限が切れていれば、その計器で取ったデータ自体が使えなくなる。改修に入る前に、対象区域の計器の校正期限を洗い出しておきたい。

どこまで再バリデーションするかは、変更管理での影響評価で決まる。全部やり直すのが安全に見えるが、範囲を絞れなければ工期も費用も膨らむ。施工側だけでは決められないので、早い段階で品質部門と施工者が同じ席につくのが、いちばん効く。引き渡し前には、施工者が実施する試験と、製造側が実施する適格性評価の境界を一枚の表にして共有しておくと、担当の押し付け合いが起きにくい。

改修後の保守は、差圧と粒子数の「傾向」を見る

引き渡しがゴールに見えて、GMP施設の本番はそのあとの保守だ。プレフィルターや中間フィルターの定期交換、HEPAフィルターの差圧管理、空調機の点検、扉やパススルーのシール確認。項目は地味だが、実施の記録が残っているかどうかで、査察のときの説明のしやすさが変わる。

見るのは、その日の数値が基準内かどうかだけではない。フィルター差圧がじわじわ上がっていないか、差圧が以前より揺れていないか。そうした傾向のほうが、異常の予兆を教えてくれる。基準を外れてから動くより、外れる前に動くほうが、稼働を止める時間は短くて済む。

医薬品製造機器の保守やキャリブレーションも、計画的に回すのが基本だ。施工した会社が保守まで見られると、改修時の図面や記録をそのまま活かせて、情報の断絶が起きにくい。IKGは建設と医薬品エンジニアリングの両方を扱っているので、このつなぎ目の相談を受けやすい立場にある。事業全体は仮設工事から医薬品エンジニアリング、橋梁リニューアルまでの事業紹介に、仮設工事や橋梁の記事はブログ一覧にまとめている。

よくある質問

クリーンルームの改修工事は、稼働しながら行えますか?

区域を仮設隔壁で分け、差圧と清浄度を保てる計画であれば、稼働区域を残したまま進められる場合があります。ただし製品や工程への影響評価が前提になるため、一律には言えません。変更管理の段階で、稼働を止める範囲と期間を決めるのが確実です。

HEPAフィルターを交換したら、どんな確認が必要ですか?

取り付け後に、据付状態でのリーク試験と、風量・差圧の確認を行うのが一般的です。判定基準は施設ごとに異なるため、事前に品質部門と合意しておきます。

バリデーションは施工会社が担当するのですか?

バリデーションの責任は、医薬品の製造を行う側にあります。施工会社は、据付記録や試験記録、校正記録など、適格性評価の土台になる資料を整える立場で関わります。

GMP区域の改修や保守は、施工と記録を分けずに考えると進めやすくなります。

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IKG エンジニアリングチーム
総合建設・医薬品エンジニアリング技術者。仮設設計・GMP施工管理の実務経験が豊富。株式会社IKG(石川組_IKG)の技術チームとして、富山県(砺波市・富山市等)、北陸エリアから全国の案件に対応しています。
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