足場の強度計算と3DCAD設計で変わる仮設工事の安全と手戻り
足場は、労働安全衛生規則どおりに組めば安全、と思われがちだ。標準の構成に収まっている間は、それでいい。ただ、大きな養生シートを張る、屋根の上に立てる、建物の形が複雑、といった条件が重なった時点で、安全の根拠は計算で示すしかなくなる。足場の強度計算と3DCAD設計が、仮設工事の現場で何を変えるのかを書く。
標準どおりの足場と、計算が要る足場の境目
労働安全衛生規則には、足場の構造に関する基準が定められている。たとえば壁つなぎの間隔は、単管足場で垂直方向5m以下・水平方向5.5m以下、高さ5m以上のわく組足場で垂直方向9m以下・水平方向8m以下。この基準に沿った標準的な足場は、一件ずつ強度計算をしないのが一般的だ。
境目になるのは、標準の前提を外れるときだ。大型の養生シートや広告幕を張る、足場の上に資材や機械を載せる、張出しや吊り足場を使う、曲面や段差の多い建物に沿わせる、階段や荷揚げ設備を併設する。ひとつでも当てはまれば、標準の想定を超えている可能性がある。迷ったら計算する、が私たちの基本姿勢だ。計算して問題がなければ、それで根拠がひとつ増える。
計算書に入るのは、設計条件(荷重、想定する風速)、部材の許容応力、壁つなぎの反力、支持する地盤や躯体の確認といった項目だ。元請が計算書に求めるのは、結論よりも前提の明記であることが多い。どの条件で計算したのかが書かれていれば、現場で条件が変わったときに、見直すべき箇所がすぐ分かる。
強度計算で見る荷重は、鉛直・風・雪、そして反力
足場に掛かる荷重は、大きく次のように整理できる。数字を出す前に、どの荷重を見るのかを決めておく。
| 荷重 | 見るもの | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 鉛直荷重 | 部材の自重、作業員・資材の積載 | 資材の仮置きで、局所的に増える |
| 風荷重 | 足場・養生シートが受ける風 | シートを張ると受風面積が大きく増える |
| 積雪荷重 | 足場・シート面に載る雪 | 冬の北陸では、付着や吹きだまりも考える |
| 反力 | 壁つなぎ・脚部が建物や地盤に伝える力 | 受ける側のスラブ・地盤・躯体の耐力 |
風荷重は、シートの有無で条件が大きく変わる。メッシュシートを張ると風の受け方が変わり、壁つなぎに掛かる力も増える。逆に言えば、シートを後から追加する変更は、計算をやり直すきっかけになる。
もうひとつ見落とされやすいのが、反力の行き先だ。足場は自立しているように見えて、荷重は最終的に建物や地面が受ける。脚部が載る下階のスラブや屋根、軟弱な地盤、壁つなぎを取る躯体の強度。足場側の計算が合っていても、受ける側が耐えられなければ意味がない。
3DCAD設計で変わること、変わらないこと
3DCADで足場をモデル化する利点は、まず干渉の確認だ。既存の庇、配管、梁型、手すり、隣地との離れ。平面図と立面図では読み取りにくい取り合いを、施工前に画面上で見つけられる。部材の数量も拾いやすく、手配の精度が上がる。
もうひとつは、関係者との共有だ。元請の担当者や職長が同じ3Dモデルを見ながら、組立ての順序や荷揚げの位置を話せる。図面だけで説明するより、認識のずれは減る。3Dモデルを構造計算の入力に使えれば、部材ごとの応力の確認まで一続きで進められる。
組立てと解体の手順の検討にも使える。どの順序で部材を上げると、途中段階の足場が不安定にならないか。壁つなぎが未設置の状態が長く続く段階はないか。完成形だけでなく、途中の姿を確認できるのは、3Dモデルの大きな利点だと考えている。
3Dで描いたから安全、ということにはならない。計算結果は、入力した荷重条件と支持条件、そして現地の実測精度に左右される。建物の実寸が図面とずれていれば、モデルも計算も、きれいにずれる。最初の実測はおろそかにできない。
足場の計画や、強度計算が要るかどうかで迷っている方向けに、条件の整理からのご相談を受け付けています。
お問い合わせフォームへ法改正で変わった、点検と一側足場の扱い
ここ数年で、足場まわりの規定は動いた。令和5年10月1日から、足場の点検を行う際は、あらかじめ点検者を指名すること、そして点検後は点検者の氏名を記録して保存することが必要になった。さらに令和6年4月1日以降は、幅が1メートル以上ある箇所で足場を使うとき、原則として本足場を使うことが求められている。
実務への影響は、計画段階で出る。敷地に1m以上の幅があるのに一側足場で描いた図面は、いまは通らない。公道にかかる部分など、管理の範囲外の場所は幅に含めない扱いや、障害物があって本足場が難しい場合の例外もある。その判断まで含めて、仮設計画の初期に確認したい。
組立てや解体に携わる人の資格も、忘れがちだ。高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更では、足場の組立て等作業主任者の選任が必要で、作業に従事する人には特別教育が求められる。
設計から点検までの流れと、手戻りが出やすい箇所
流れは、現地の実測、3Dモデルの作成、荷重条件の確認、強度計算、施工図、組立て前の打合せ、組立て後の点検、そして変更があるたびの再確認。順番自体は当たり前に見える。
手戻りが出やすいのは、着工後に条件が変わるときだ。養生シートを追加する、荷揚げ位置を移す、一部だけ先に解体する。こうした変更は現場ではよく起きる。失敗は、計算の前提が変わっているのに、当初の計算をそのまま使い続けてしまうことから生まれる。変更が出たら、まず前提が変わっていないかを確認する。これを癖にするだけで、事故の芽はかなり減らせる。
点検も、計画の一部として考えたい。強風、大雨、大雪などの悪天候や中震以上の地震のあとは、作業を再開する前に点検し、異常があれば直ちに補修する。いつ誰が点検するのかを、計画の段階で決めておく。令和5年の改正で、点検者の指名が必要になったことは前述のとおりだ。
北陸のように冬の積雪や季節風が強い地域では、工期が冬にかかるかどうかで、必要な検討が変わる。工程表を見ながら、季節の条件を最初に織り込んでおきたい。IKGでは、3DCADによる設計と強度計算、仮設機材のレンタルを一続きで扱っている。事業全体は仮設工事から医薬品エンジニアリング、橋梁リニューアルまでの事業紹介に、ほかの記事はブログ一覧にある。
よくある質問
足場の強度計算は、法律ですべての足場に義務づけられていますか?
すべての足場に個別の計算書が求められるわけではありません。労働安全衛生規則の構造基準に沿った標準的な足場と、そこから外れる足場とで扱いが変わります。規模や工期によっては計画の届出が必要になる場合もあるため、労働基準監督署に確認してください。
3DCADを使わないと、足場の強度計算はできませんか?
できます。強度計算そのものは3DCADがなくても行えます。3DCADは、干渉の確認や数量の拾い出し、関係者との共有を早く正確にするための道具です。
冬の北陸で足場を組むとき、特に気をつけることは何ですか?
積雪と季節風です。足場やシート面への雪の付着、吹きだまりによる荷重の偏り、強風時の養生シートの扱いを、計画段階で検討します。
足場の計画は、図面が固まる前に相談してもらえると、選べる手が多く残ります。
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